書店にいくと、平積みされた本の脇にディスプレーされた書店員の手書きのPOPに目がいく。どんな本だろう、とあれこれ想像する楽しみを奪われている気もしないではないが、多くの書籍に接している書店員の推薦だからとひとまず手にするケースが多い。
新刊を扱う書店の書店員の投票によってノミネート作品、および受賞作が決定される「本屋大賞」の存在もその背景にあるからなのか。手書きのPOPを置くようになってから本の売れ行きが変わったとも聞く。書店員の読後感からの熱意についついほだされてしまうこともある。大手書店ならずとも、説得力のある書評が並んでいる店には知らずのうちに足が向く。
POPとは本来「販売地点」のことを示す。つまりお客さまとの接点における広告のこと。店側にとってPOPは安価な費用で高い効果が得られる販売促進ツールであると同時に、客側にとっても安心して購入するための道標となる情報源である。
街を歩いていてもあちこちで手書きのPOPに出会う。レストランなどのメニューボードもあるが、店頭に立てられたスタンドPOPに書かれたお薦めメニューやイラストなどに店側の意欲が伝わることが多い。
旅館・ホテルでも、もっとPOPを多用してみてはどうかと思う。地元の土産品にさまざまなPOPが用意されている宿もあるが、もう少し手を加えられないものか。全国どこの宿にいっても売店の土産内容はそう変わらない。同じに見えてしまうのはなぜだろうと常々思っていた。地産地消を表向きに掲げていても、お客さまとの接点ではそのアピールが足りないような気もする。
現代は、モノを欲しいと思っていながらも、買おうとする欲求をいつしか忘れてしまうという人が圧倒的に多い、というレポートをどこかで読んだ。購入欲につなげようとしてもなかなかつながらない時代なのだそうだ。それだけに、お土産を買いたいと思っている人を前にした場合、かなりインパクトのあるフレーズでその商品の良さをアピールしてもいいのではないかと思う。
例えばその商品を作っている人の顔写真やメッセージ、食べた時の印象、買った人々の感想など、買う側の興味をそそる表現があっていいと思う。
これは売店に限ったことではない。ティーラウンジやレストランはもちろん、ロビーなどで開催されている催しなどの告知などにもPOPを利用してみてはいかがだろう。もちろん手書きで。スタッフに内容作りを任せれば、仕事への愛着や責任感も湧く。